大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和25(れ)610 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人難波貞夫の上告趣意は、末尾に添えた別紙記載の通りであるが、論旨は結

局事実審の専権事項たる証拠調の範囲の裁定と証拠の取捨判断とを攻撃するに帰す

る。なるほど論旨の指摘する通り、被告人が本件盗難品の売却方をAに依頼したこ

とについては、直接の証拠が挙がつているが、被告人はB某から頼まれてAの所へ

持つて来たものだと弁解しているのであつて、被告人自身が盗んだということにつ

いては、直接の証拠はないのである。しかし原審は被告人を取調べた警察吏Cの供

述により、被告人が逮捕された時の模様および被告人がB某の名を出すに至つた径

路の不自然さ等から判断して、被告人の弁解を排斥したのであつて、さらにその他

の証拠をも綜合して被告人の窃盗行為を認定したのは、必ずしも経験則に反しない。

論旨は、原審は被告人の前科によつて本件犯罪を断定したと非難するが、被告人と

Aとの年来の親近関係が原審認定の資料になつているとは考えられるけれども、前

科のみによつて判断を下した形跡はない。要するに原判決に理由不備審理不尽の違

法ありとは言い難く、論旨は理由がない。

よつて、旧刑訴法第四四六条に従い、主文の通り判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

検察官 安平政吉関与

昭和二五年九月一二日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

- 1 -

裁判官 穂 積 重 遠

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!